カリフォルニアの夕日が、アナハイムの空をオレンジ色に染め上げていました。 2026年4月4日(日本時間5日)、エンゼル・スタジアム。
試合前の練習中、外野フェンス際で一人の大男が何度も跳ねていました。 ジョー・アデル選手。
かつてその高い身体能力を持て余し、守備でのミスに唇を噛んでいた若者は、今やこのフェンス際を自身の庭へと変えつつあります。
穏やかな風が吹く中で始まったマリナーズ戦。 この夜、スタジアムに詰めかけたファンは、歴史の目撃者となりました。
【アデル伝説】
1試合3度のホームランキャッチ成功1回目: 初回ローリーの先制本塁打を阻止
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2回目:8回ネイラーの同点本塁打を阻止
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3回目:9回クロフォードの同点本塁打を阻止
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エンゼルスが1-0で勝利エンゼルス1-0マリナーズ
🎥@MLB pic.twitter.com/xCq2exyHCK— 【SS】大谷速報&スポーツ速報 (@30R9gmaMUy3guDJ) April 5, 2026
初回、放物線がグラブに吸い込まれた音
試合は、静かに、しかし鮮烈に動き出しました。 1回表、先頭打者のネト選手が初球を叩き、左中間スタンドへ放り込みます。
1対0。 この、たった一つの得点が、これほどまでに重い意味を持つことになるとは、まだ誰も想像していませんでした。
その裏、マリナーズの主砲、カル・ローリー選手が打席に入ります。 快音とともに放たれた打球は、ライトフェンスへと向かって一直線に伸びていきました。
誰もが「同点弾」を確信し、腰を浮かせた瞬間です。 背番号7は、迷いなくフェンスへと突進しました。 黄色いラインを越える、高い跳躍。 グラブの芯でボールを叩く、硬い音が響きました。
着地し、何事もなかったかのようにボールを掲げる彼。 メジャー30球場のうち、20球場ならスタンドに届いていたはずの打球は、彼の手の中に収まりました。 これが、長い夜の始まりでした。
過去のミスを塗り替える、フェンス際の足跡
アデル選手という男を語る上で、避けて通れない場面があります。 メジャーデビューした2020年。テキサスでの試合です。 右翼へ飛んだ平凡なフライ。
彼はそれを捕り損ね、あろうことかグラブでボールを押し出し、フェンスの向こう側へ届けてしまいました。 記録はホームラン。
「守れない外野手」というレッテル。 期待と不安が入り混じる視線の中で、彼は人知れず足跡を積み重ねてきました。
「守備はずっと、自分の課題だったんです」 試合後、彼はそう振り返りました。 どうすれば打球の軌道を早く読み取れるか。 どうすればフェンスとの距離感を体で覚えられるか。
その傍らには、いつも一人の男がいました。 ゴールドグラブ賞を9度獲得した名手、トーリー・ハンター氏です。 春のキャンプ、二人は外野の芝生の上で、何度も同じステップを繰り返していました。
かつてエンゼルスの外野を「不可侵の領域」に変えたレジェンドの言葉が、彼の体に少しずつ、しかし確実に染み込んでいったのです。
8回、勝利の予感に震えた雄たけび
試合は1対0のまま、終盤の8回へ。 マウンド上の緊張感が、スタンドのファンにも伝わっていました。 1点リード。一振りでひっくり返る、脆い均衡です。 打席にはジョシュア・ネーラー選手。
捉えた打球は、右中間へ大きな弧を描きました。 先ほどよりも、さらに深い位置。 アデル選手は、打球を見上げることなく、落下地点へと全力で走りました。
フェンス際、芝生が途切れる瞬間の感覚。 彼は完璧なタイミングで宙を舞いました。 またしても、グラブが白球を奪い取ります。 確信の捕球。
彼はフェンスに寄りかかりながら、力強く拳を握りました。 スタジアムを震わせるような、無意識の叫び。 それは単なるアウト一つへの喜びではありませんでした。 自分の守備が、チームの勝利を支えている。 その手応えが、彼に吠えさせたのです。
9回、観客席へ飛び込んだ「最後の仕事」
いよいよ9回。 クローザーのロマノ投手がマウンドに上がります。 しかし、先頭のクロフォード選手が放った打球は、無情にもライトポール際へと向かいました。 ファウルか、ホームランか。 ライン際を走るアデル選手に、迷いはありませんでした。
彼はフェンスを恐れることなく、そのまま観客席へとダイブしました。 ファンが手を伸ばし、歓声と悲鳴が入り混じる中、彼の姿が一瞬消えます。 静寂。
そして、彼が観客席から立ち上がり、右手を高く掲げました。 そこには、しっかりとボールがありました。 1試合で3度目の「本塁打強盗」。
中継局のキャスターが「こんな光景、見たことがない」と叫び、審判も驚きを隠せない様子でリプレー検証を行います。 判定は、アウト。 その瞬間、球場はポストシーズンのような熱狂に包まれました。
(参照:スポニチアネックス エンゼルス・アデル 1試合3度の“本塁打強奪”は史上初?の快挙 米メディアも称賛「歴史に残る守備」)
まとめ
- ジョー・アデルが1試合で3度の本塁打キャッチを記録し、1-0での勝利に大きく貢献。
- 1回(ローリー)、8回(ネーラー)、9回(クロフォード)といずれも入れば同点・逆転の打球を阻止。
- 1試合で3度の「本塁打強盗」は、MLB史上初とみられる歴史的な快挙。
- 守備難に苦しんだ新人時代を経て、レジェンド・トーリー・ハンター氏の指導によりゴールドグラブ級の守備力を獲得。
- チームは初回ネトの先頭打者本塁打による「スミ1」を守り切り、連敗を阻止。
試合後のロッカー。 アデル選手の周りには、チームメイトたちの輪ができていました。 感謝を伝えるロマノ投手、笑顔で肩を叩くスズキ監督。
「今日はジョー・ショーだったね」 監督がそう言うと、彼は照れくさそうに笑いました。 かつてグラブでボールをフェンスの向こうへ押し込んでしまった男は、今、自分のグラブ一つでチームを救い続けています。
アナハイムの夜。 ファンが家路についた後のスタジアムで、ライトフェンスには、彼が何度も蹴り上げたスパイクの跡が、白く、鮮やかに残っていました。 明日の試合、彼はまた、どんな放物線を私たちから奪ってくれるのでしょうか。
この記事を読んで、アデル選手の成長した姿が、少しでも目に浮かびましたでしょうか?
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