【ミラノ五輪 フィギュアスケート団体】リンクサイドで冷気に打たれ30年。私がミラノの氷上で見た、日米「1点差」に隠された執念の正体

喜び爆発!堂々の銀メダル! ミラノ五輪2026

2026年2月8日、イタリア・ミラノ。 フィギュアスケート団体戦が幕を閉じた瞬間、私の頭をよぎったのは、4年前の北京での「あの光景」でした。当時は表彰式さえ行われず、後から届いた繰り上げの銀メダル。

だからこそ、今大会のキャプテン坂本花織が口にした「今度は本当の銀メダルを」という言葉には、現場の私たちにまで伝わるほど強烈な覚悟が宿っていました。結果はアメリカとわずか「1点差」。金に届かなかった悔しさはあるでしょう。

しかし、30年以上もこの競技を追い続けてきた身からすれば、王者をあそこまで「必死」にさせた日本チームの地力こそが、今回の真の価値だったと感じています。

「よすぎるバトン」が繋いだ、スマイルと涙の連鎖

団体戦は、孤独なシングルの集まりではありません。それは「善意の押し付け合い」のような、泥臭くも美しいリレーです。今回、その口火を切ったのはアイスダンスの吉田唄菜/森田真沙也組でした。

彼らがクリーンな滑りでチームに勇気を与えると、ペアの「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一組が、自己ベストを塗り替える会心の演技で爆発。

特に木原選手。彼はソチ五輪からずっと、この団体戦の苦楽を背負ってきた「生き証人」です。かつては「ペアが日本の弱点」なんて心ない言葉を浴びせられた時期もありました。

そんな彼が、「次は僕たちがチームを助ける番」と語り、世界歴代3位のスコアで坂本選手にバトンを渡した。

その姿を見ただけで、30年リンクサイドで冷気に打たれてきた私の鼻の奥は、ツンと熱くなりました。

王者アメリカを「なりふり構わず」にさせた、日本の地力

今回のハイライトは、数字以上にアメリカの「焦り」に表れていました。通常、団体戦の直後に個人戦を控える男子シングルは、負担を減らすためにショートとフリーで選手を替えるのが定石です。

実際、日本は層の厚さを活かし、ショートに鍵山優真、フリーに佐藤駿という必勝リレーを組みました。

しかし、アメリカはそれを許されなかった。日本の猛追に怯えた王者は、絶対エースのマリニンを温存することなくフル稼働させるしかなかったのです。

もしマリニンを温存していれば、日本の佐藤駿が見せた4回転ルッツを含む完璧な演技によって、金メダルの行方はひっくり返っていたでしょう。

「個人戦のために体力を残したい」という本音を捨て、なりふり構わず全力投球せざるを得なかったアメリカの姿。これこそが、日本が世界最強の「層」を手に入れた何よりの証拠です。

佐藤駿が背負った「最後の1点」と、若者に伝えたいこと

最終種目の男子フリー。マリニンの200点超えという異次元の演技の直後、リンクに立った佐藤駿選手の横顔を私は忘れられません。

重圧で押し潰されそうな静寂の中、彼は武器である4回転ルッツを完璧に決め、自己ベストを更新しました。

「チームジャパンから力をもらえた」と語る彼らの言葉は、SNSでよく見る定型文ではありません。

リンクサイドで三浦佳生らが声を枯らし、坂本が「龍一くんから最高すぎるバトンが来た」とはにかむ。

そこにあるのは、自分一人のためなら諦めてしまう限界を、仲間のために超えていくアスリートのピュアな姿です。

まとめ:銀色のバトンが繋ぐ、新しい物語

結果は銀メダル。でも、そこには1点差という数字以上の「日本の進化」が刻まれていました。30年前、日本がフィギュア界でこれほどまでの「厚み」を持つなんて、誰が想像できたでしょうか。

一歩一歩、氷を削るようにして道を切り拓いてきた先人たちの思いが、今の若き選手たちに血肉となって受け継がれています。

団体戦という最高の助走を終え、ここから舞台は個人戦へ。好スタートを切った日本代表の「バトン」は、より一層輝きを増しながら、次なる氷上へと繋がっていきます。

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