30年前に「ならず者」と言われたスノーボードが、どうやって「世界で一番優しいスポーツ」になったのか。
スキー・スノーボード雑誌のライターとして30年、雪山の厳しい現実も奇跡のような瞬間も見てきた私ですが、2026年2月、ミラノの青空の下で、勝敗を超えた「最高にクールな景色」に出会いました。
今、SNSで「これこそがスノボの魅力!」と 世界中でシェアされている1枚の写真があります。 それは、男子スロープスタイルの決勝が終わったあとの、 ゴール地点での出来事でした。
金メダルの「蘇翊鳴(スー・イーミン)選手」、 銀メダル、日本が誇る「長谷川帝勝(たいが)選手」、 そして銅メダルの「ジェイク・カンター選手」。
3人は、自分たちが命をあずけた大切なボードを雪に突き立て、 肩を組んで、最高の笑顔で笑い合っていたんです。
(出典:Olympics.com:Su Yiming wins gold; Hasegawa Taiga silver in Slopestyle)
30年前、リンクの雪はもっと「尖(とが)っていた」
私がスノーボードを始めた30年前。 当時のボードは、社会への反抗や、 「誰よりも目立ってやる」というエゴの象徴でした。スキーヤーからは煙たがられ、ライバルは言葉も交わさない「敵」。
雪の上では誰もが孤独な「一匹狼」で、 今の彼らのように、ゴールで板を並べて称え合うなんて、 当時の私たちには「甘い」とさえ思えたかもしれません。
でも、ミラノの過酷なコースを滑りきった彼らを見て、 30年経ってようやく、本当の「強さ」を知りました。「一人で勝つ」ことよりも、「最高の滑りをみんなで称え合う」。 その心の余裕こそが、今のスノボ界を支える新しい力なんです。
「0.28点」の差を溶かした、最高のリスペクト
ミラノのコースは、30年滑り続けてきた私が見ても、 思わず足がすくむほど巨大なジャンプ台が並ぶ激しいものでした。 わずか「0.28点」という、まばたき一つの差で決まった金と銀。
普通なら、悔しくて顔も上げられないような差です。でも、銀メダルの長谷川選手は、 転倒の恐怖を共に乗り越えたライバルに対し、 「彼と一緒に滑れて誇らしい」と真っ先に笑顔を見せました。
(出典:Boardriding.com:Milano Cortina 2026 Slopestyle Recap)
この「負けを認める潔さ」と「相手への敬意」。 30年前の殺伐とした空気の中で滑っていた私には、 この光景が眩(まぶ)しすぎて、画面が涙で滲(にじ)みました。
次の世代へつなぐ、雪の上の「新しいルール」
30年前、私たちは「誰が一番か」に命を懸けていました。 でも、2026年の今、ライダーたちが教えてくれたのは、 「リスペクト(尊敬)」という新しいカッコよさです。
順位が決まったあと、3人がボードを雪に突き立てたのは、 「俺たちの戦いは終わった、あとは最高の仲間だ」 という、言葉のいらない合図だったのでしょう。
SNSで流れてくる「#スノボ最高」という言葉。 その裏には、国籍も順位もこえて、 「雪の上が大好きだ」というシンプルな、 でも何よりも強い「冬の絆」がありました。
まとめ:雪の上に刻まれた「一生モノの友情」
「ライバルが板を並べたゴールシーン」 それは、30年雪の上を滑ってきた私が、 ようやく見つけた「スノーボードの正解」でした。
金メダルも、銀メダルも、銅メダルも。 雪に突き立てられたボードの横で笑う彼らにとって、 その価値はきっと、みんな同じだったはずです。
雪の上に刻まれた、3人の深い足跡。
それは、2026年のミラノが教えてくれた、 どんなメダルよりも輝く「一生モノの友情」の形でした。 スノーボード、やっぱり一生やめられそうにありません。
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