ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピック。数ある競技の中で、私が最も胸を熱くし、そして「今大会最大のサプライズ」を期待しているのがアイスホッケー女子日本代表、通称「スマイルジャパン」です。
パックがフェンスに激突する鈍い音、エッジが氷を鋭く削る音、そして選手たちの張り詰めた息遣い。「氷上の格闘技」とも称されるこの激しい競技において、かつて日本は世界の厚い壁に跳ね返され続けてきました。
しかし、ウィンタースポーツを30年間見続けてきた私の目には、今のスマイルジャパンは明らかに「別次元」のチームに映っています。彼女たちはもう、単なる「健気な挑戦者」ではありません。
メダルを現実的に狙える、世界屈指の「戦術集団」へと進化を遂げたのです。なぜ、彼女たちは強くなったのか? その理由を独自の視点で紐解いていきます。
「体格差の壁」を越えた先にあるもの:30年前の記憶と現代の進化
私がウィンタースポーツの取材や観戦を始めた約30年前、日本のアイスホッケー、特に女子チームが世界大会で直面していたのは、絶望的なまでの「体格とパワーの差」でした。
北米や北欧の強豪国選手と対峙すると、まるで大人と子供のような体格差があり、パックを奪い合うコンタクトプレーでは一方的に吹き飛ばされてしまう。
技術や俊敏性で対抗しようとしても、パワーで強引にねじ伏せられるシーンを何度も見てきました。当時は「いかに失点を減らすか」が精一杯の目標だったように思います。
しかし、今のスマイルジャパンを見てください。もちろん、体格的なハンデが完全に消えたわけではありません。
ですが、彼女たちは長年にわたる科学的なフィジカル強化によって、世界の当たりに「耐えうる身体」を手に入れました。
重要なのは、パワーで真っ向勝負するのではなく、「当たり負けしない土台」の上で、日本人が本来持つ俊敏性や持久力を活かせるようになった点です。
この土台ができたことが、過去のチームとの決定的な違いであり、戦術の幅を劇的に広げた要因です。
世界が嫌がる日本の武器:「組織的な運動量」とハイプレス
スマイルジャパンの最大の武器、それは世界一とも言える「豊富な運動量に基づいた組織的な守備」です。
アイスホッケーは攻守の切り替えが目まぐるしいスポーツですが、日本チームはリンクに出ている5人全員が、まるで一つの生き物のように連動して動きます。特に相手陣地から積極的にプレッシャーをかける「フォアチェック」の質が非常に高い。
個の力で打開しようとするカナダやアメリカといった強豪国に対し、日本は常に2人、3人でパック保持者を囲い込み、パスコースを限定し、思考時間を奪います。
これは、体力的に非常にタフな戦術ですが、走り勝つことを厭わない日本の献身性がそれを可能にしています。
30年前の視点から見ると、かつての日本は「守らされていた」のに対し、今の日本は「意図的に相手を罠にはめてボールを奪っている」のです。
この能動的な守備こそが、世界の強豪国が「日本とはやりたくない」と口を揃える理由であり、メダルへの最大の鍵となります。
「善戦」では満足しない黄金世代の成熟
そして何より、チームのメンタリティが劇的に変化しました。ソチ五輪での全敗、平昌五輪での歴史的な初勝利、そして北京五輪での決勝トーナメント進出と世界トップ6入り。
着実にステップアップしてきた現在の主力メンバーは、世界のトップレベルを肌感覚で知っている「黄金世代」です。
彼女たちにとって、オリンピックはもはや「憧れの舞台」ではありません。世界の強豪と互角に渡り合い、勝つための場所です。「良い試合だった」「惜しかった」という言葉では誰も満足しません。
その健全なアスリートとしての渇望と、長年培ってきたチームワークの成熟が、ミラノの地で最高潮に達しようとしています。
まとめ:氷上の笑顔の裏にある、鋼の意志を見逃すな
スマイルジャパンという愛らしい愛称の裏には、30年かけて世界の厚い壁を少しずつ、しかし確実に削り取ってきた、選手たちの鋼のような意志と、緻密な計算に基づく戦術が隠されています。
体格で劣るチームが、知恵と運動量とチームワークで世界を凌駕する。それは、スポーツが持つ最もエキサイティングなカタルシスの一つです。
ミラノのリンクで、彼女たちが歴史を変える瞬間を、ぜひその目で見届けてください。パックが動くその一瞬まで、絶対に目が離せません!
(合わせて読みたい:【ミラノ五輪】ついに開幕!ミラノ・コルティナ五輪、30年ウィンタースポーツを見続けた私が断言する「過去最高に美しい祭典」3つの理由)


コメント