2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪。氷の上を時速100キロ超えで突き進む選手たちを見ていて、ふと思ったんです。「なんであんなに涼しい顔で、針の穴を通すようなターンができるの?」と。
答えは、映像をスローにしても見えませんでした。答えは、彼らが身につけている「魔法の装備」の中にあったんです。スキー・スノーボードを愛して30年。
まだ「カービング」なんて言葉もなく、ウェアがネオンカラーでパンパンに膨らんでいた時代から雪山を這いずり回ってきた私からすれば、今の五輪は、もはや私たちが知っている「スキー」とは別の、未来のスポーツに見えてしまいます。
視界に「正解」が表示される、異次元のゴーグル
今、SNSで若者たちが「これ、ゲームじゃん!」とザワついているのが、一部のトップ選手が使い始めている最新の解析技術とスマートギアです。
AIカメラが選手の滑りをミリ単位で捉え、それをデータ化して瞬時にフィードバックする。かつては「長年の勘」と「根性」で掴み取っていた勝利へのラインが、今はデジタルで可視化される時代になりました。
(出典:読売新聞:ミラノ・コルティナ冬季五輪 後押し ミズノ アシックス 関西企業 開発 用具 スキー板)

30年前の私のゴーグルといえば、少し息を吐くだけでレンズが真っ白に曇り、視界不良は当たり前。吹雪の日は、雪面の凹凸なんて見えませんでした。
「たぶん、あっちが下だ!」という野生の勘だけを信じて飛び込んでいたあの頃とは、まさに別次元の戦いです。
「ただの鉄の棒」と格闘していた30年前の記憶
今のスキー板は、真ん中がキュッとくびれていて、板を傾けるだけで「魔法」のように勝手に曲がってくれます。でも、私の青春を支えていた30年前の板は違いました。
当時の板は、自分の身長よりはるかに長い「2メートル超え」が当たり前。しかも、くびれなんて1ミリもない、ただの「重くて長い真っ直ぐな棒」でした。
それを曲げるためには、板の真ん中に全体重をかけ、力技でしならせ、雪面を削り取るようにねじ伏せるしかありませんでした。
リフトを待つ間、肩に担いだその「重い鉄の塊」のせいで肩はバキバキ。転べば長い板がクロスして、まるで亀のように起き上がれなくなる。
不便で、重くて、でも、あのアナログな道具を自分の腕力と脚力だけで支配できた瞬間の快感は、何物にも代えがたい「男の勲章」のようなものでした。
道具が変わっても、最後に笑うのは「自分の感覚」
最新のAIやハイテクギアがあれば、誰でも金メダルが取れるのでしょうか?
30年、雪山の酸いも甘いも噛み分けてきた私は、あえて「NO」と言いたいです。 どんなに道具が進化しても、最後に雪からの振動を受け止めるのは自分の「足の裏」であり、冷たい風を感じて姿勢を微調整するのは自分の「肌」です。
便利な道具に甘えるのではなく、道具を「自分の感覚を拡張するための相棒」にできるか。今のSNS世代の皆さんも、もし最新のギアを手に入れたら、ぜひ一度「道具の向こう側にある、雪の生々しい感触」を意識してみてください。
まとめ
ミラノ五輪のハイテクギアは、私たちが30年かけて積み上げてきた「苦労」を、鮮やかな「感動」へと昇華させてくれました。
不便だったあの頃の「重み」を知っているからこそ、今の道具の軽やかさが涙が出るほどありがたい。「昔は大変だったんだよ」と苦笑いしながら、最新の板で軽やかにシュプールを描く。
そんな風に、新旧両方の良さを味わえるのは、長く雪山を愛してきた私たち世代だけの特権かもしれません。あなたは今、自分の相棒(道具)と、どんな会話をしていますか?
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